犬の肝臓の働き | 肝臓の数値上昇を指摘された飼い主さんへ | 体の基礎知識

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血液検査や健康診断で、犬の肝臓数値の異常を指摘され、びっくりする飼い主さんがたくさんいらっしゃいます。でも大丈夫、慌てる必要はありません。

まずは肝臓の働きを理解しましょう。

その上で、担当の獣医師と落ち着いて今後の対応を話し合うことが大切です。

肝臓のはたらき

肝臓は犬の体最大の臓器です。肝臓は栄養素の貯蔵や加工、代謝など様々な働きを担う「体の生化学工場」とも呼ばれます。再生能力にも優れ、肝臓を一部切り取っても数ヶ月後には元の大きさに戻るくらいの力を持っています。

その分、多少のダメージでは症状が出にくいと言う特徴があります。そのため肝臓の病気は症状が出る頃にはかなり進行していることが多くあります。肝臓が「沈黙の臓器」と呼ばれるのはこのためです。

定期的に受けている血液検査で「肝臓の数値が上がっています」と言われると、「え!うちの犬はこんなに元気なのに?」と少なからずショックを受ける飼い主さんも多くいます。

しかしながら、肝臓は「症状が出る頃にはかなり病気が進んでいることが多い」臓器なのです。

症状がまだ出ないうちに異常が見つかったのであれば、まだできることはたくさんあります。早期発見のおかげでその後、元気な状態を何年もキープできる場合もあります。まずは冷静に現状の把握に努めましょう。

「肝臓ってどういう臓器なの?何をしているの?」

まずは肝臓について「知る」ところから始めていきましょう。

肝臓は栄養の貯蔵と加工を行う

肝臓は送られてきた栄養素を貯蔵します。例えば「糖質」は過剰分は脂肪として蓄えられますが、肝臓にも「グリコーゲン」の形で貯蔵されます。その他にもタンパク質や脂質など、体に必要な物質を私たちの体が利用できるよう作り替えているのも肝臓の働きによるものです。

代謝作用

体内の老廃物や摂取した薬などの分解、抱合などにより無毒化し、胆汁や尿として排泄します。

例えば、タンパク質が代謝されると最終的に「アンモニア」が生成されます。「アンモニア」は犬の体にとっては有害です。そこで肝臓では、「アンモニア」を無害な「尿素」に作りかえる働きをしています。

病気の際に飲む薬も、一定の時間が経つと肝臓で分解され尿などへ排泄されます。この働きがないと、薬の成分が体に蓄積し、中毒症状を引き起こす場合があります。

造血の調整、血液量の調整

肝臓は血液を貯蔵し、必要に応じて放出します。造血に関わる鉄やビタミンB12の貯蔵も行います。

寿命の尽きた赤血球を破壊し、そこから鉄を回収し貯蔵する働きも担っています。また、壊れた赤血球から出てくる「ビリルビン」と言う色素も肝臓で代謝されてから、体外へ排泄されます。

血液検査で「ビリルビン」の数値が上昇すると胆道系の病気を疑われる場合があります。これは本来、肝臓で代謝された「ビリルビン」が胆汁として排泄されるのが、何らかの理由で妨げられている可能性があるからです。

肝硬変ってどういう病気?

肝臓の細胞が炎症を起こした状態を「肝炎」と呼びます。肝炎の理由は様々ですがウイルス感染がで起こるものを「ウイルス性肝炎」と呼びます。

肝臓は1/2が失われても命に影響がないと言われます。また一部を切り取られても数ヶ月で再生する力があるのは既に述べたとおりです。しかしながら肝炎により徐々に細胞が壊され、元来丈夫な肝細胞ですら再生が追いつかなくなると、幹細胞が萎縮・変性してしまいます。

正常な肝細胞の代わりに結合組織とよばれる「繊維」が増殖します。これにより肝臓が硬く、萎縮するようになります。これを「肝硬変」と呼びます。

肝硬変」が起こると肝臓本来の働きが十分機能しなくなります。栄養素の代謝や体に不要なもの、有害物の解毒、分解も進まなくなり体に蓄積していきます。「肝硬変」が進行すると「肝不全」となり、アンモニアなど毒性を持つ物質が溜まり、脳を犯す場合もあります。

このように「肝硬変」は命に関わる可能性のある病気です。しかし肝臓はその再生能力と頑丈さのため、少々の不調であれば特に症状を表すことなくカバーし続けてしまいます。そのため病気に気付きにくく、はっきりとした症状が出てきたときには既にかなり進行しているのは、先に述べたとおりです。

「何の症状もないのに、血液検査の肝臓の数値が高いなんて…」

こんな風に、検査結果に疑問と不安を持つ飼い主さんは少なくありません。

ですが、これを逆の考え方をすれば「血液検査をしたからこそ、症状が出ない初期段階で病気を見つけられた」と言えます。

初期の肝炎であれば、投薬でそれ以上炎症を進行させない、または進行を遅らせるなどの対応が可能です。

慌てずに担当獣医師とよく相談して、治療方針を決定しましょう。

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